
FOTO: MARIANNE RUSTAD CARLSEN / NRK
これは「さすがノルウェー人!」と言わざるを得ない。まず昨日(12月19日)の夜七時のニュースをご紹介する。
ある八歳の女の子が、クリスマスソングのテレビ番組を見ていた。そのテレビ番組は日本でいうところのN H Kに当たる、N R Kで、毎年クリスマスイブに放送される少年合唱団の美しいコーラスを放送していた時のことである。いつものように何の気なしにテレビを見ていたシグネ・バッケン・ベルゲは、突然思った。「あれ、女の子だって歌っていいはずだ。」そしてそのテレビ局のオーケストラの楽団長に手紙を送った。内容は次の通りだった。
N R Kさま、こんにちは
少年合唱団と少女合唱団は、毎年交代で歌うのがいいと思います。
シグネ、八歳
反応はどうだっただろう。単なる子どもの手紙だと突き放されただろうか。ところがそうではなかった。シグネは楽団長の事務室に(多分一緒の男性は父親だろう)直々呼ばれ、子どもだからと馬鹿にせず、一人の人間としてきちんと話を聞いてくれたあと、こう言ったのである。「いただいたお手紙のことですが、実は全く考えていなかったことだけど、シグネさんのいうことは誠に理にかなっていると思いますよ。だから少女合唱団は、お正月の首相の挨拶の時に、国家の「そうだ、我ら、この国を愛す」を歌うことに決まりましたよ。」
ここでニュースは終わっているので、来年のクリスマスイブにどちらの合唱団が歌うのかは視聴者にはわからないが、きっとこの八歳のシグネの提案通りになるような気がする。また、イブにはまだ数日残されているので、シグネが見た少年合唱団がイブに歌うというのは、おそらくイブのテレビ番組のお知らせだろう。
それにしても「さすが」という理由は、まず男女平等という概念に関してだ。ノルウェーの社会や学校教育が、男女平等をベースに組織されているために、たとえ年齢が低くても、平等概念が育ちやすいようになっているからではないだろうか。ノルウェーの子どもたちは、幼い頃から完全とは言えないが男女平等な環境で育ち、例えば保育園の送り迎えは母親に限ったことではないし、保育園の先生はじめ、学校の教師、保護者会、そしてメディアの中でも、どちらか一方だけというのは少ない。学校の生徒の名簿は男女別にはなっていず、アルファベット順だ。つまり男女がごちゃ混ぜになっている。完全に50%ずつ分けるのが正しいとは言わないが、様々なところでノルウェー人は、男女両方が混ざっているのに慣れている。こんな環境で育ったノルウェー人が、少年だけで構成された合唱団が毎年クリスマスイブに歌っているのを見て、おかしいと思うのも、むしろ自然な反応だろう。
もう一つの平等概念についても注目すべきなのは、それはわずか八歳という若さでも、堂々と大人に意見ができ、またそれを聞く大人も、この少女を一人前の人間として扱っているということである。ここには決して「子どものくせに」という空気は感じられない。もちろん子どもは発達段階の途中にあるため、様々な場面で大人の手ほどきが必要なことはある。しかし、このシグネが感じて手紙を書いたことは、年齢には関係がなく、社会全体に非常に重要な一件である。ノルウェーの平等というと、まず男女の平等が挙げられるが、このように年齢の平等についても、多く学べることがある。
下記のリンクにはビデオが含まれており、たとえノルウェー語がわからなくても、楽団長がシグネとどのように話しているのか、よくわかるだろう。どうぞご覧あれ。
https://www.nrk.no/kultur/skreiv-til-kringkastingssjefen-for-a-etterlyse-jenter-1.13833459
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