オスロ在住のソマリア女性たち、抗議の声を上げる

 最近では女性が抗議の声を上げることは、日本でも珍しくなくなってきたようですが、これがソマリア女性となると、大変珍しいのです。

 ソマリア女性はまずほとんどがムスリムで、ノルウェー在住のソマリア女性というと、まず自分の父親かパートナーに従順で、人前では貝のように口を閉ざしたまま何も発言することはないのが、普通です。このブログで紹介したアマル・アデンもソマリア出身ですが、彼女は典型的ソマリア女性とは違い、公共の場で堂々と女性の権利を主張し、ノルウェー全国でソマリア女性またはムスリム女性の権利について、講演しています。ソマリア出身の女性が女性の権利を主張することは危険でもあり、ボディーガード同伴で移動しなければならないほどです。

 さて、このソマリアの女性たちが主張していることとは、次の通りです。「もう掃除や料理ばかりするのは、うんざりだ。私たち女性にも人権があるし、ここはノルウェーで、男女平等の国だ!」と言っているのです。

 ことの起こりは8月の始めの土曜日に、イスラム教徒が礼拝をするオスロのモスクでは、新しい役員を決める会議が行われたのですが、女性は全く参加することができず、女性たちが入ろうとしても、ガードマンに阻止されてしまったそうです。実はモスクでは、女性と男性が別々のドアから入場するのは普通ですが、このときは、女性用の入り口が閉まっており、男性用の入り口から入ろうとする時に、ガードマンから止められたということです。

 女性たちが男性の一人に文句を言っている時、すかさずモスク内の男性たちが、携帯で女性たちの写真を撮ったそうですが、女性たちは急いで顔を隠したとか。「女性たちは、ソーシャルメディアに写真を載せられるのを遅れていると、女性の一人が新聞記者に答えていたそうです。ソーシャルメディアに顔写真が載るということは、その女性の名誉に関わるということだそうです。室内だけでなく、モスクの前を通った車から女性たちの写真を撮った人がいて、ソーシャルメディアにソマリア語で解説されていたのは、「男性だけが問題を起こすわけではない。ほら、女性たちも問題だ。だから女性が地獄に多く落とされるんだ」ということでした。

 モスクでのいさかいは内輪では済まず、オスロ市当局まで巻き込むほどの大きな問題にまで発展し、警察も何度も呼ばれることになりました。また金銭問題もあるそうで、リーダーたちのお金の使い方が問題だとも、指摘されているそうです。

 女性たちは、モスクでは老若男女の全てを代表する役員が必要だと主張していますが、モスクのリーダーは、「誰でもモスクへは大歓迎しますし、会員でもそうでなくても、歓迎します。私たちのモスクは全ての人に開かれていますし、民主的なモスクです。」と主張しています。

 いずれにしても、このソマリア女性たちが、そろって声を上げたということは、大きな第一歩です。前述したように、まだまだ女性の名誉問題など課題は多いですが、これを機会に、少しずつ彼女たちの権利が向上することを、心から願うばかりです。

 こちらのリンクから、写真やビデオが見られます。

https://www.aftenposten.no/norge/i/jd6GLo/kvinneopproer-i-den-somaliske-moskeen-vi-er-lei-av-aa-vaske-og-lage-m?fbclid=IwAR3AetPTw6R0eutnJwsbWcUCpnz7ZNWSz26sj18MXUr3lMg5jnvlh4IzI_A

ノルウェーの徴兵制度

Foto: Kennedy/flickr

 ノルウェーでは2015年から、男女両方のノルウェー国民に、徴兵制度を義務化することに決まりました。この男女平等に基づく徴兵制度は、ヨーロッパで初めてということです。

 男女平等になった当時は、男女同室のために、女性兵士が布団の中で着替えをしなくてはならないということがあったそうですが、現在は男女別の寝室になっています。

 以前から女性兵士はいましたが、過去には女性にとって不都合なことも起こりました。例えば2011年には女性兵士が30人の男性兵士と共に、裸になって前を洗うことを強制されました。その間4人の男性である上官が見張っていたそうです。後にこれを命令した上官は、事務の仕事に回され、罰金刑(2500クローネ)も課せられました。 続きを読む

中国のノルウェー人の人権概念への見解

少し前にお知らせしたが、中国を訪問中にノルウェー国王が中国側にぜひ話したかったことが、人権問題についてだった。中国が少数派であるウイグル族などを弾圧していることは、日本のメディアでも報道されているが、そのほかについても例えば報道の自由を始め、さまざまな社会規制があるとも報道されている。

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ノルウェーの警察庁長官

Benedicte_Marie_Bjørnland,_PST-sjef

https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.en

少し前になりますが、2019年4月1日に、ベネディクテ・ビヨルンラン氏が警察の最高責任者である警察庁長官に就任しました。ビヨルンラン氏はこれまで警察庁の警察保安庁の長官でしたが、2018年12月20日に任命されました。

2012年から2019年まで警察保安庁長官だったビヨルンラン氏は、これまでもニュースなどにたびたび出演して、様々な事件についての解説をしてきました。そのために、警察庁長官になったということにも、予測されていたことなので、それほど大きなニュースにはなりませんでした。

当時の法務・緊急任務大臣のトール・ミッケル・ヴァラ氏によると、ビヨルンラン氏は長く警察内で様々なリーダーの経験があり、仕事で素晴らしい成果を納めてきたという。これからの警察庁長官としての働きに、期待したいということです。

ちなみに警察庁の理事は、ビヨルンラン氏を始め7人のうち4人が女性です。またビヨルンラン氏の元職場の警察保安庁では、9人の理事のうち女性は2人となっています。

 

ノルウェー国王と中国の人権問題

Foto: Heiko Junge / NTB SCANPIX

少し前にノルウェー国王について紹介したが、今年2018年の秋には夫妻で中国を訪問している。北京始め上海やその他ゴビ砂漠などを訪問し、中国国家主席の習近平とも会談が火曜日に予定されている。国王は女性ではないが、ノルウェーの性を含む人権問題において、重要な役割をしている。最近注目されているノルウェー国王の中国訪問をここで紹介する。

さて、数日後に迫った中国主席との会談だが、ノルウェー国王は国王として稀とも言える内容を考慮している。その内容とは 続きを読む

プロフィールの訂正

プロフィールの日付に間違いがあったことをお詫びする。昭和66年と書いてしまったが、昭和は64年で終わっているとご指摘を受けた。大変ありがたく、心から感謝の意を示したいとともに、読者の皆様に心からお詫び申し上げる次第である。

男女平等を要求して手紙を送った8歳の少女

FOTO: MARIANNE RUSTAD CARLSEN / NRK

これは「さすがノルウェー人!」と言わざるを得ない。まず昨日(12月19日)の夜七時のニュースをご紹介する。

ある八歳の女の子が、クリスマスソングのテレビ番組を見ていた。そのテレビ番組は日本でいうところのN H Kに当たる、N R Kで、毎年クリスマスイブに放送される少年合唱団の美しいコーラスを放送していた時のことである。いつものように何の気なしにテレビを見ていたシグネ・バッケン・ベルゲは、突然思った。「あれ、女の子だって歌っていいはずだ。」そしてそのテレビ局のオーケストラの楽団長に手紙を送った。内容は次の通りだった。

N R Kさま、こんにちは

少年合唱団と少女合唱団は、毎年交代で歌うのがいいと思います。

シグネ、八歳

反応はどうだっただろう。単なる子どもの手紙だと突き放されただろうか。ところがそうではなかった。シグネは楽団長の事務室に(多分一緒の男性は父親だろう)直々呼ばれ、子どもだからと馬鹿にせず、一人の人間としてきちんと話を聞いてくれたあと、こう言ったのである。「いただいたお手紙のことですが、実は全く考えていなかったことだけど、シグネさんのいうことは誠に理にかなっていると思いますよ。だから少女合唱団は、お正月の首相の挨拶の時に、国家の「そうだ、我ら、この国を愛す」を歌うことに決まりましたよ。」

ここでニュースは終わっているので、来年のクリスマスイブにどちらの合唱団が歌うのかは視聴者にはわからないが、きっとこの八歳のシグネの提案通りになるような気がする。また、イブにはまだ数日残されているので、シグネが見た少年合唱団がイブに歌うというのは、おそらくイブのテレビ番組のお知らせだろう。

それにしても「さすが」という理由は、まず男女平等という概念に関してだ。ノルウェーの社会や学校教育が、男女平等をベースに組織されているために、たとえ年齢が低くても、平等概念が育ちやすいようになっているからではないだろうか。ノルウェーの子どもたちは、幼い頃から完全とは言えないが男女平等な環境で育ち、例えば保育園の送り迎えは母親に限ったことではないし、保育園の先生はじめ、学校の教師、保護者会、そしてメディアの中でも、どちらか一方だけというのは少ない。学校の生徒の名簿は男女別にはなっていず、アルファベット順だ。つまり男女がごちゃ混ぜになっている。完全に50%ずつ分けるのが正しいとは言わないが、様々なところでノルウェー人は、男女両方が混ざっているのに慣れている。こんな環境で育ったノルウェー人が、少年だけで構成された合唱団が毎年クリスマスイブに歌っているのを見て、おかしいと思うのも、むしろ自然な反応だろう。

もう一つの平等概念についても注目すべきなのは、それはわずか八歳という若さでも、堂々と大人に意見ができ、またそれを聞く大人も、この少女を一人前の人間として扱っているということである。ここには決して「子どものくせに」という空気は感じられない。もちろん子どもは発達段階の途中にあるため、様々な場面で大人の手ほどきが必要なことはある。しかし、このシグネが感じて手紙を書いたことは、年齢には関係がなく、社会全体に非常に重要な一件である。ノルウェーの平等というと、まず男女の平等が挙げられるが、このように年齢の平等についても、多く学べることがある。

下記のリンクにはビデオが含まれており、たとえノルウェー語がわからなくても、楽団長がシグネとどのように話しているのか、よくわかるだろう。どうぞご覧あれ。

https://www.nrk.no/kultur/skreiv-til-kringkastingssjefen-for-a-etterlyse-jenter-1.13833459

大人のヨーロッパ街歩き〜ノルウェー・ベルゲン編

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私にとって生まれて初めて経験したことだが、俳優の白石美帆さんと一緒に「大人のヨーロッパ街歩き〜ベルゲン編」にテレビ出演させてもらった。この番組は、ヨーロッパのいろいろな街を訪ねて、現地に住んでいる日本人の案内とともに、街の名所など紹介しているのだ。テレビ用のカメラを向けられたのは生まれて初めてだったため、最初は緊張したが、教師という仕事柄人前で話すのは慣れているおかげで、なんとかうまく行った。とは言え、普段日本語で敬語などほとんど全く使っていないせいで、たどたどしい日本語を話している自分が情けない。

番組の中で紹介させていただいたのは、ノルウェーを代表する音楽家のグリーグの家を始め、魚市場、ハンザ同盟時代の家々、素晴らしい眺めのフロイエン山などの観光名所だけにとどまらず、市内で人気のカフェやレストランなどを案内させていただいた。その中でわずかな時間ではあったが、このブログで紹介しているノルウェーの最初のフェミニストである、ルードヴィヒ・ホルベルグを紹介し、少しでもノルウェー平等史について紹介させていただいたのは、嬉しい限りだった。

日テレBSで2020年まで再放送しているので、ぜひご覧あれ!

白石美帆さんのブログ

https://ameblo.jp/mihoshiraishi/entry-12108130496.html

 

父親に引かれて歩く花嫁

父親と花嫁

Ingar Storfjell (foto)

 

ただいま改稿中です。しばらくお待ちください。

 

参考資料